トランスフォーメーションは破壊ではない –  明日の乗客のエクスペリエンスを作り出すことである

Matt Roundスピーチ

tangerineのチーフ クリエイティブ オフィサー Matt Round氏は、他社に負けない企業であり続けるためにはカスタマー エクスペリエンスにおけるイノベーションが必要不可欠な1ステップである、と Railway Interiors Expo 2017 で論じています。彼のスピーチ「トランスフォーメーションは破壊ではない」には、カスタマー エクスペリエンスが意味するものとは、カスタマー ジャーニーに基づいて革新することの重要性、イノベーションをどのように達成するか、イノベーションが鉄道にもたらすものとは、という4つのキーポイントが含まれています。

優れたカスタマー エクスペリエンスは、企業の競争力を維持し、消費者を惹きつけるブランドを確立することができます。スペインの電力会社 Cepsaの新しいフラッグシップサービス ステーションでは、かがり火のようなキャノピーの目を引くデザインがハイウェイからドライバー達を引き寄せ、競合と差をつける、誰もが認識できるブランドの象徴となりました。

「実体がないために見落とされるもの、それが人々をブランドの虜にする要素です」とRoundは言います。航空業界では Virgin Australia(ヴァージン・オーストラリア)がビジネス クラス バーを新たに導入したことで、乗客は座席から離れたスペースを満喫し、一方で乗務員が乗客に直接サービスを提供できる新たな場を設けたことで、ビジネスにとっても有益となりました。こうした感情的なつながりが強いブランド ロイヤルティを生み、座席数を保ちながら売り上げを向上させるのです。

Virgin Australia ビジネス クラス バー

鉄道分野ではカスタマー エクスペリエンスの向上が社会規範となっています。世界の人口は増え続けており、2050 年には 90 億人に達する見込みであり、都市部に住む人口はその 75%に及ぶといわれています。地球の資源は限られていることから、より環境を配慮した効率の良い都市交通で人々を魅了することは必須なのです。目的地までのより良いカスタマー エクスペリエンスを生むことは、人々の生活の質を向上するだけではなく、公共交通機関という移動手段をより魅力的なものにすることでしょう。

イノベーションはビジネス成功の決め手となることから、カスタマー ジャーニーに基づいて革新することは重要なのです。顧客を競合他社に取られてしまうことを防ぐだけでなく、徐々に所有経費全体を減らすこともできるのです。「重要なポイントは、質の低いカスタマー エクスペリエンスをデザインするにも、質の高いエクスペリエンスをデザインするのと同じコストがかかるということです」とRoundは警告します。

乗客の旅に合わせたイノベーションを考えるとき、それを後押しする多くの主なポイントをRoundは指摘します。そのうちの 2 つは異なる分野の専門家たちとの意見交換と企業文化です。

Roundは、イノベーションを勧めるために企業は「専門分野の領域を超える意見交換」を行うべきであると論じます。例えば、Dr. Richard Hendersonは、電子顕微鏡を使用してプロテインや感染性物質の複雑な構造を明らかにし、化学ノーベル賞を受賞しました。科学的な進歩は、想像的なアプローチ、そして様々な分野の専門家と交流すること、問題に対する新たな見解を提供することで生まれます。特定の分野で向上することはできますが、専門分野の領域を超えて集うことで真の躍進を生みます。

企業は、顧客の思考への理解を深め、カスタマー ジャーニーのあらゆる角度から検討するという文化を発展させる必要があります。ペルソナを作ることは、サービスを利用する様々な人々の人物モデルを生み、観察・リサーチすることで洞察力を生み、人々が重要とする習慣をつかむことができます。これらの関係を学ぶことで、カスタマー エクスペリエンスを向上させるキーポイントを見つけることができ、企業は、デザインを通したイノベーションのためにどこに重点を置き、いかに実行するかを理解できるのです。これが正しく行われることで、デザインは見た目の美しさだけでなく戦略性をもち、企業がブランドを築きより高い商業価値を生み出すことができます。

2012 年のロンドンオリンピックに向けたHeathrow Express(ヒースロー・エクスプレス)ファーストクラスの車両一新プロジェクトにおいては、乗客の行動をより深く理解するために観察とコンシューマー リサーチを行いました。デザイナーは、ボックスシートのある既存の車両形態は、ラグジュアリーな空間、快適さ、プライバシー、安全を求めるファースト クラスの乗客のニーズではなかったという結論に達しました。その解決策は、個々の空間を持たせた一列の座席と荷物を近くに収納できるスペースでした。

Heathrow Express(ヒースロー・エクスプレス)ファースト クラス

現在の鉄道分野における課題は、抑制された、断片的、保守的なセクターであることから、手を加えるときに様々な制限が出てきてしまうということです。HyperloopやHS2といった大きな事業は、産業に急速な変化をもたらす可能性をもっていますが、人々の交通手段のエクスペリエンスに有意義な変化をもたらす可能性を秘めた、乗客の心により近づくということは重要視されなくなってしまいます。

人々の移動が増え、相互に接続できるようになったため、カスタマー ジャーニーにとってのデジタルサービスの重要性はより高まり、様々な交通機関を利用する乗客にとってより一層役に立っています。デジタル テクノロジーによって乗客は電車の中だけでなく自宅から目的地までの移動時間全体を有効に使うことができます。様々なプラットフォームでデータが相互作用を持つため、各個人に合わせた情報をモバイル デバイスで見ることができます。これにより乗客は、移動時間だけでなく移動に関するより細かい情報を得ることができます。例えば、駅でお気に入りのカフェをみつけたり、コーヒーを買うための待ち時間を知らせてくれたり、各個人の予定している移動に関連した交通情報をリアルタイムで提供します。

多言語が飛び交う多文化社会の広がりによって、鉄道を利用する乗客との新たなコミュニケーション方法を生み出すことは重要と考えられます。駅の構内にて乗客の道順をわかりやすくするには、乗客が携帯電話に各個人の移動に合わせた道筋を持つことで途切れのないカスタマー ジャーニーを実現し、乗客の流れをよりスムーズにすることができます。

都市の人口増加だけでなく、より根本的な問題に高齢化があげられます。空港では一般化された動く歩道が、将来は駅のホームにも導入される可能性があり、これは電車の車両数が増加していることや、乗客を下車させ素早く発車することへのプレッシャーの高まりによるものです。車両の外側に空席数の情報を表示することも考えられ、それにより混雑と滞留時間を減らすことができます。スマート ウィンドウに情報を表示することで、乗客はスマートフォンを使わずにリアルタイムの情報を見ることができます。これにより、実体的なブランド エクスペリエンスで顧客とのつながりを深める、際立った体験を作り出します。各個人の移動に合わせて情報を提供することは位置の確認や乗客の流れをスムーズにし、遅延を最小限におさえるために役立ちます。

すでに満員に近い飽和したネットワーク上でプレッシャーを高めるには、将来的に私たちの移動手段における需要を満たすため社会的行動や鉄道輸送への社会的認識の基盤に変化が必要となるかもしれません。電車の両側にホームがある場合、乗車と下車の同時アクセスをコントロールするドアの利用によって、乗客は電車の各側から同時に乗り降りができます。この方法によって、乗客の流れをスムーズにし、混雑時の滞留時間を減らせます。折り畳み式のシートは時間帯に応じた活用ができ、乗客が短い時間立って乗車することで混雑時の乗客数を増やすことができます。

人々へ公共交通機関の利用を奨励する社会的状況は増加しています。公共交通機関は排出物がより少なく経済的で、速度も通常速く、また世界の資源問題も深刻化していることから、その乗客数は減ることはないものの、さらに増加するでしょう。競争がますます激しくなる中、鉄道会社は成功するために商業的な義務も果たさなければなりません。イノベーションなしでは我々の生活は停滞し、たちまち敗者となってしまいます。競合企業よりも先に立ち得る機会を見定めたとき、あなたは戦略的に有利な立場になったといえます。他と差別化された製品とサービスを生み出すためにこの強みを生かせば、ブランドを築き発展させることができるでしょう。

「最終的に、消費者のためになることを正確に行うことがすなわちビジネスのためにもなるのです」とRoundは述べます。

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