INFUSED ESSENCE – 航空インテリアショーケース 2024

Tangerineは、世界中の企業や文化との共創しながら、最適なデザインを融合するためのアプローチを有しています。最新の、日本のJALやポーランドのLOTの客室内装プロジェクトはその一例です。

1. JAL A350ファーストクラスキャビンで体験する至高の日本のラグジュアリー
文化のニュアンスや国の文化的特性とは何でしょうか?デザイナーはこれらの要素をどのように解釈し、航空会社と乗客に共鳴する旅行体験を生み出すのでしょうか?文化の解釈は極めて繊細な作業であり、デザインエージェンシーと航空会社の見解が食い違う要因ともなり得ます。tangerineのチームは、航空会社がキャビンプログラムを始動させる前の早い段階で協力することが最善の戦略だと考えています。プログラムの初期段階に多くの時間を投資することで、実現可能性への理解が深まり、航空会社の戦略的な野心とのより良い統合を図ることができます。
日本航空(JAL)は、コロナ前の規制が始まる前に、チームメンバーをロンドンのtangerineスタジオに派遣しました。彼らは、Design Immersionというプログラムに参加し、このプログラムを通じて、ロンドンのスタジオでのデザインプロセスを学び、数ヶ月にわたって両チームがアイデアを共有し、デザイン理論を展開する機会を見出しました。この結果、tangerineが考案した「Infused Essence」というコンセプトは、JALの国内線機材に導入され、ブランドの核となる価値を表現しました。JALは2019年6月、A350およびB777型機の新しい客室内装を国内路線で発表しました。

2. tangerineのInfused Essenceデザイン戦略に基づいたJAL A350ビジネスクラスシート
JALの国際線プログラムは、ちょうどコロナの影響が始まった時期にスタートしました。世界の空は次々と閉ざされ、厳しいロックダウンを課した国々による前例のない移動とぶ物流の課題に直面しました。
しかししかし、前述したDesign ImmersionプログラムのフェーズでJALとデザイナー間の理解を深めたことで、両チームは困難な時期にも正しい決断を下す自信を得ることができました。「サプライチェーンの全協力企業が一丸となり、tangerineのデザインビジョンを最終的に実現することができました。このアプローチは長期間対面での会議ができなかったときに特に役立ちました」と、tangerineのChief Creative OfficerであるMatt Roundは述べています。同氏は以前、2022年に導入されたフィンエアー(Finnair)の新しいビジネスクラスも手がけています。「事前プログラムを取り入れたことで、tangerineはOEMサプライヤーへのRFP(提案依頼書)が発行される前に、デザインビジョンの準備を進めることができました。」tangerineは、シートメーカー選定プロセスにおいてシートベンダーと協力。新しいファーストクラスシートの製造にはSafranが選ばれました。そして、tangerineは新製品のデザイン開発においても連携し、新しいシートの提案が決定されると、tangerineは商業的な利益を生みだすための魅力と収容能力の完璧なバランスを実現。新しいファーストクラスキャビンには1-1-1のレイアウトで6席が設置されており、置き換えられる機材よりも2席少なくなっていますが、この新しいレイアウトにより、結果として、乗客が極上の日本式ファーストクラス体験を楽しめる豪華な空間が実現しました。

3. JALプレミアムエコノミーキャビンに続く日本デザインと職人技のテーマ
キャビン内の日本文化の影響は繊細な形で表現されています。繊細なダウンライターのデザインは、かつて東京のランドマークだった伝説的なホテルオークラのオーチャードバーで提供されるカクテルにインスパイアされています。このホテルは、モダニズムの傑作として知られ、日本の職人技を体現した建築物とされています。同様に、ファーストクラススイートのドアには、浮世絵や日本の伝統的な木工技術を彷彿とさせる格子細工が施されています。
JALの商品・サービス開発部の西垣淳太氏は次のように説明しています。「日本の本質を非日本企業に伝え、示すことは一見難しいように聞こえるかもしれません。しかし、tangerineはJALを含む日本企業との実績があるため、彼らとのコミュニケーションは容易でスムーズでした。日本人が感じる「日本の本質」に加え、国際的な顧客が期待する「日本らしさ」を反映することが重要でした。この点において、グローバルな視点をプロジェクトにもたらしたtangerineの専門性を高く評価しています」

4. LOTポーランド航空のキャビン内装に込められたポーランドの風景
tangerineによる最近のもう一つの注目すべきプロジェクトは、ポーランドで行われたLOTポーランド航空(LOT)のものです。LOTは1928年に設立され、現在も運航を続ける最古のナショナルキャリアの一つです。LOTは、ポーランドのもてなし文化を新しいキャビン提案に取り入れ、中央・東ヨーロッパの中で最も選ばれる航空会社を目指す野心を持っていました。
Matt Roundとtangerineのチームはポーランドを訪れ、CEOやクリエイティブ、著名な映画監督と対話を重ね、ポーランド文化を深く掘り下げました。
Matt Roundは「ポーランドは驚くべき光で満たされ、息を呑むような風景が広がっています。アーティストたちは魔法のようなエネルギーを生み出し、大胆な建築が風景に刻まれています。これはまさにインスピレーションの宝庫でした」と述べています。
ポーランドの建築物の多くは、ポーランドの工芸品、美しい風景、そして国内で今も採掘されている銅の豊富さからデザイン言語を引き出しています。tangerineのデザインチームがポーランドがヨーロッパ最大の銅生産国であることを知った際、この素材はLOTの温かいホスピタリティを表現するのに最適だと感じました。特にポーランドのZoryにある「the Museum of Fire」からインスピレーションを得た銅のアクセントがキャビン全体にちりばめられています。

5. 銅色の仕上げがビジネスクラスシートにも反映
キャビンの他の部分では、青が基調ですが独自の工夫が施されています。tangerineのCMFデザイナー、Rui Xuは、青はLOTの象徴的なブランドカラーであり、多くの航空会社でも採用されています。私たちが直面した課題は、「この青をどう再定義するか」という問いでした。と述べています。「Pure Polish(純粋なポーランド)」というテーマは、ポーランドの伝統を基盤とし、LOTの未来への野心を形作っています。すべての要素がポーランドの精神を捉えるようにデザインされています。バルクヘッドには、タトラ山脈の上空に広がる壮大な日の出と夕暮れの景色が反映されています。ビジネスクラスでは、深い青から淡い青へと移り変わる幻想的なグラデーションが描かれ、プレミアムエコノミーでは深い青から琥珀色に変化する空の鮮烈な瞬間が表現されています。そして、エコノミークラスでは深い青から空色のピンクへと移ろいゆく景色が再現されています。
LOTの商品開発および顧客体験部門のディレクターであるIzabela Leszczyńska氏は次のようにまとめています。「すべてのクラスの新しいキャビンスペースはポーランドの風景からインスピレーションを得ています。鮮やかで深い青はLOTブランドを完璧に表現しており、銅のアクセントはポーランドの太陽の温かさを象徴しています。このデザインはビジネストレンドに沿っていますが、世界で最も古く、最も認知度の高いポーランドブランドの一つとして、私たちは文化的な遺産からの要素を忘れません」。
一見対照的なブランド言語を持つ2つの航空会社ですが、それでも安全で快適に乗客を世界中に送り届けるという野心は、空に輝く星々のように一致しています。

6.プレミアムエコノミーのバルクヘッドデザインに反映されたタトラ山脈上空の空
The 2024 Showcase issue of Aircraft Interiors International is now available online! Editor – Adam Gavine